■天のめぐみ［天の恵］（寛政8年）

【判型】大本1冊。縦257粍。

【作者】九嶋（九島）保義（＊寛政8年早印本は「義保」、不学自性居士・天恵斎カ）作・画。

【年代等】寛政8年板：寛政5年秋作刊。寛政8年1月、八広翁実立（立志軒）序・再刊（［京都・江戸・大阪ほか］同志衆中蔵板）。

【備考】分類「心学」。寛政8年早印本。『天のめぐみ［天の恵］』は諸本によって書名の読みも異なり、特に文化板は寛政板を大幅に改編したものであるので別記する。『天のめぐみ［天の恵］』は、多くの道歌と適宜挿絵を交えて「君子国の教え」や「神国の大道」を説いた書。寛政8年板は、題簽下部に収録内容を「天地開初しより父母の図」「みそぎのおほんはらひ」「神祇かんおうのみはらひ」「かみのみことのり」「諸びやうおこらざるのはらひ」と記すが、冒頭部分は「身曽岐御祓（ミソギノミハライ）」「神祇感応祓」「一切成就祓」「諸病不起祓（オコラザルノハライ）」を掲げ、以下、天地すなわち天津国津神の恵みや天地の働き、また、我身が天津神の御末の分御魂（ワケミタマ）であり、我身の尊いこと、真の心や誠の心神の人、そのほか人倫、家職等の生活心得にも言及する。寛政板後印本には、最終丁に「東京飯倉町5丁目44番地、仏教出版発弘書林、森江佐七」の朱印を押す。また、改編板（文化板）は、神儒仏に通じた作者が「女わらべによろづ冥理を知らしめんため」に詠んだ道歌を主とする教訓書で、主に①「六根清浄大祓」（目・耳・鼻・舌・身・意の六根の穢れを除く祓い）、②「よねのおほんめぐみ（米の御恵み）」（日本神話の国産み・神産みの過程で、伊弉諾尊の息から風の神である級長戸邊命(シナトベノミコト)（級長津彦命(シナツヒコノミコト)）、穀物の神である倉稲魂命(ウカノミタマノミコト)、産みの神である少童命(ワタツミノミコト)等の神々が生まれた経緯と、五穀神霊（稲生五社八太神(イナリゴシャヤハシラノオオンカミ）を図解と共に説く）、③「父のねざめ」（「伊弉諾の神の始めの御心を、つたへ給ひし我々ぞかし」以下101首の道歌で父（母）の恩や父（母）の育児のあらましを諭す）、④「母のおしえ」（「伊弉冉のなみなみならぬ御姿を、うつし給ひし今の此の身ぞ」以下95首の道歌で女子の心得や女子教育の要点を教える）、⑤「天満宮御遺訓（菅公道真誡書）」（父母の恩を忘れて神仏に現世・来世を祈るのは本末転倒であり、両親を「生身(ショウジン)の天津神・国津神」として敬い仕えることの大切さや、この道理を左右の床に書き置き朝夕眺めて心掛けよと諭す）、⑥「一休和尚法語」（地獄が眼前にあることや己が神仏と一体であることや、倹約、家業出精を説く）、⑦「いろはうた」（「いづち（何方）とも高天原の内なれば、神の恵みを受けぬものなし」以下49首（イロハ47首と「京」「立」の2首）で神の恵みや神の御心を諭す）、⑧「神の恵（神のおほんめぐみ）」（「此の国の教えとふときみはら（御祓）ひは、一二三四五六七八九十(ひふみよいむなやごと)々々に」以下13首の教訓歌）、⑨「魂鎮祓(たましずめのはらい)」（「大元尊神、証明成就、心則一元、未生神明…」で始まる8句から成る祓い）の7編を収録し、随所に「大学の道」「早稲・中稲・晩稲」「貧乏神の姿の七相・福の神の装い七体」等の図解を挿入する。なお、改編板の文化元年板のうち文化6年再板本については、『大阪出版書籍目録』195頁に「天の恵 一冊／作者 天恵斎（大阪）／蔵板主 右同人／売弘 藤屋弥兵衛（高麗橋一丁目）／出願 文化六年三月／許可 文化六年五月二十七日」と記す。

★原装・題簽付・状態概ね良好。稀書（全国に所蔵数カ所（国文学研究資料館DB））。【参考価格（初出品時の相場）：日本の古本屋で、57,200円】。